家を売るときに迷いやすいのが、建物を解体して土地として売るべきか、それとも建物を残したまま売るべきかというところです。大まかな方向としては、建物にまだ使える価値があり、そのまま住める状態に近いなら、最初から解体しないほうがよいです。反対に、老朽化が進み、買主が建て替えを前提に考える地域では、土地として売るほうが話が進みやすいかと思いますす。
ただ、築年数だけで決めてしまうのは避けたほうがよいと思います。建物の状態、周辺で売れている物件の傾向、解体費を含めた手取り額、税の特例の有無まで並べて見ていくと、判断しやすくなります。この記事では、どこを確認し、何を比べ、どう決めていくとよいかを順番に整理してみます。
最初に確認したいこと
売却では「古い家だから壊したほうがよさそうだ」と決めてしまうのは早合点なこともあります。築年数が古くても、そのまま住める家なら中古戸建として売れる可能性がありますし、最初は古家付きで売り出して、反応を見てから解体を検討する方法もあります。反対に、建物の傷みが強く、買主が建物部分に不安を感じやすい家では、残したままよりも土地として見せたほうが話しやすくなります。
建物がそのまま使える状態か
最初に見ておきたいのは、建物が「そのまま住める家」として受け止めてもらえる状態かどうかです。ここで確認したいのは、雨漏り、建物の傾き、シロアリ被害、給排水の不具合、屋根や外壁の傷みなど、生活に直接影響する不具合です。見た目が古いことより、住むために大きな修繕が必要かどうかのほうが、売り方の判断に強く関わります。
売主の目だけで判断するのが不安なときは、不動産会社の査定だけでなく、ホームインスペクションや工務店の点検を使う方法もあります。どこに不具合があり、直すならいくらかかるのかが分かると、「補修して建物付きで売る」「補修せず古家付き土地として売る」「解体して更地で売る」という選択肢を比べやすくなります。
その地域で求められているのが建物か土地か
次に見たいのは、その地域で買主が何を求めているかです。駅に近い場所や住宅地として人気が高い地域では、買主が建て替え前提で土地を探していることがあります。その場合、建物を残していても価格に上乗せされず、むしろ解体費の話が先に出てしまうことがあります。
一方で、建物の広さや間取りに需要があり、リフォーム前提で中古戸建を探す人がいる地域なら、建物付きのまま売ったほうが選ばれやすいこともあります。不動産会社に査定を依頼するときは、査定額だけでなく、「周辺では更地が多いのか、古家付きが多いのか」「実際に売れた家はどの程度の状態だったのか」まで聞いておくと、判断材料が増えます。
再建築できる土地か
解体する前に必ず確認しておきたいのが、その土地に新しい建物を建てられるかどうかです。今は家が建っていても、接道条件などの事情で、壊した後に同じように建て替えられない土地があります。こうした土地では、建物を壊したあとに土地としての使い道が狭くなり、売りにくくなる場合があります。
この確認では、再建築の可否、接している道路の種類、セットバックの要否、用途地域、建ぺい率、容積率まで見ておくのが大切です。不動産会社に任せきりにせず、役所調査の内容や説明をしっかり確認したうえで進めるほうが安心です。
建物を残して売るほうがよい場合
建物を残して売るほうがよいのは、建物にまだ商品価値があるときです。たとえば、雨漏りや傾きがなく、最低限の清掃や補修で内見に出せる家、間取りや広さに一定の需要がある家、買主が自分でリフォームして住むことを想定しやすい家などです。
この場合は、最初から解体せず、「中古戸建」あるいは「古家付き土地」として売り出すほうが柔軟に動けます。建物付きで探している人に届く可能性を残しつつ、反応が弱ければ途中で売り方を変えることもできます。最初に壊してしまうと、この選択肢は残りません。
特に、手入れが行き届いている家、庭や駐車場に魅力がある家、賃貸利用やDIY前提で探す人が見込めるエリアでは、建物を残したままのほうがよい結果につながることがあります。
解体して土地で売るほうがよい場合
一方で、解体して土地で売るほうがよいのは、建物が売却の妨げになっているときです。たとえば、傷みが強くて修繕費がかさむ家、残置物が多く室内を見せにくい家、古い間取りや設備のために買主が全面改修か建て替えを前提に考える家がこれにあたります。
こうした家では、建物を残していることで「解体費はいくらかかるのか」「壊したら地中から何か出てこないか」といった不安が先に出やすく、価格交渉も厳しくなりやすい傾向があります。更地にして境界や越境関係まで確認できていると、買主は総額を考えやすくなり、話がまとまりやすくなることがあります。
ただし、ここで見たいのは売却価格だけではありません。更地の価格が高く見えても、実際には解体費、残置物撤去費、測量費、滅失登記に関する費用などがかかります。ですので、比べるときは「いくらで売れるか」ではなく、「最終的にいくら手元に残るか」で見る必要があります。
数字で比べるときの見方
売り方を決めるときは、次の2つを並べると分かりやすくなります。
建物を残して売る場合は、
想定売却額 ー (仲介手数料などの売却費用 + 最低限必要な補修費)
を考えます。
解体して土地で売る場合は、
想定売却額 ー (売却費用 + 解体費 + 残置物撤去費 + 測量費)
の額を考えます。
この2つを比べて差が小さいなら、まずは建物を残した形で売り出してみる方法も考えやすくなります。反対に、更地にしたほうが手取り額で明確に上回り、売却までの期間も短くなりそうなら、解体を前向きに考えやすくなります。
あわせて見ておきたいのが、売却までの維持費です。固定資産税、草刈りや清掃の費用、空き家の管理にかかる負担、遠方から通う交通費などを含めると、売却が長引くこと自体が負担になることがあります。価格差が小さいときは、この維持費まで入れて比較したほうが判断しやすくなります。
税金と特例で先に見ておきたいこと
解体後は固定資産税の扱いが変わることがある
住宅が建っている土地には、住宅用地に関する固定資産税の軽減措置があります。小規模住宅用地では課税標準が6分の1、一般住宅用地では3分の1に減額されます。ただし、空き家対策特別措置法に基づく勧告を受けた土地などは、この特例の対象外になる場合があります。建物を残していても、状態や使い方によっては有利にならないことがあるため、税負担は事前に市区町村へ確認しておくほうが安心です。
自宅を売る場合、解体後でも3,000万円特別控除の対象になる場合がある
自分が住んでいた家を壊して土地だけを売る場合でも、一定の条件を満たせば居住用財産の3,000万円特別控除が使えることがあります。たとえば、解体から1年以内に売買契約を結ぶこと、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、解体後に駐車場や賃貸用地など別の用途に使っていないことなどが条件になります。
この特例を考えているときは、先に解体してから売却方法を考えるのではなく、解体の時期と売却時期を一緒に確認しておくほうが安全です。税理士や不動産会社に、今回の売却が特例の対象になるかを早めに見てもらうと安心です。
相続した空き家は、解体してから売る場合も特例の対象になることがある
相続した空き家では、被相続人居住用財産の3,000万円特別控除が使える場合があります。昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること、区分所有建物でないこと、相続から売却まで一定の使い方にとどまっていることなど、細かな条件があります。
この特例は、解体して土地だけを売る形でも対象になる場合がありますが、期限や要件が細かく、自治体からの確認書が必要になることもあります。相続物件では、解体してから考えるより、特例の対象になるかを先に確認してから進めたほうがよいと思います。
売り方は途中で変えることもできます
解体するかどうかを最初に決めきれないときは、最初は建物付きで売り出し、反応を見てから解体を検討する方法もあります。この進め方なら、建物付きで探している買主がいるかどうかを市場で確かめられます。
査定を依頼するときは、「建物付きで売る場合の想定価格と売却までの期間」と、「解体して土地で売る場合の想定価格と手取り額」を分けて出してもらうと比べやすくなります。その際には、査定額だけを見るのではなく、どの層の買主を想定しているかまで聞いておくことが大切です。自分で住む人を想定しているのか、建売会社や不動産業者を想定しているのかで、価格の意味が変わるためです。
最終判断までの順番
以上長くなりましたが、あらためて整理すると、迷ったときは次の順番で確認していくと判断しやすくなります。
1. 雨漏り、傾き、シロアリ、設備故障があるか
2. 住める状態にするための補修費はいくらか
3. 解体したあとに再建築できる土地か
4. 周辺では中古戸建と更地のどちらが多く売れているか
5. 建物付きと更地で、売却額と手取り額がどれくらい違うか
6. 解体費、残置物撤去費、測量費を見込んだか
7. 3,000万円特別控除や相続空き家の特例に影響しないか
8. 固定資産税や管理費を含めて、売却までの負担を計算したか
この順番で見ていくと、「古いから壊す」「空き家だから更地にする」といった決め方を避けやすくなります。建物の状態、土地の条件、手取り額、税の特例を並べて見ていくほうが、落ち着いて判断しやすくなります。
迷ったときは何を基準に決めるか
最後に基準をひとつに絞るなら、「建物を残す理由が数字と条件で説明できるか」を見ておくとよいと思います。建物を残す理由が、単に解体費を払いたくないというだけなら、売却では不利になることがあります。反対に、そのまま住める、少ない補修で売れる、建物付きで探している買主が見込めるという事情があるなら、残す意味は十分あります。
はじめに建物付きと更地の両方で査定を取り、売却額ではなく手取り額で比べます。そのうえで、税の特例に影響しないかを確認し、最後に解体するかどうかを決めるという流れです。家の解体は後から元に戻せませんので、先に数字と条件をそろえてから決める進め方のほうが、納得しやすい売却につながるのではないかと思います。
