実家や親の家を相続したものの、「このまま持ち続けるべきか」「売却したほうがよいのか」と迷う方も少なくないかと思います。相続した不動産を売る場合、通常の売却とは異なり、事前に整理しておきたい手続きがいくつかあります。ここでは、相続した家を売る前に行っておきたい準備を、具体的な進め方とあわせて整理してみます。
相続が発生したら最初に確認したいこと
売却を考える前に、相続そのものが正しく整理されているかを確認することが大切になります。
相続人を確定させる
まず行うのは、法定相続人の確定です。被相続人の出生から死亡までの戸籍をたどり、相続人を確認します。
- 戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍は、本籍地の市区町村役場で取得する
- 遠方の場合は、郵送請求やオンライン請求を利用できる自治体もある
相続人の把握は、その後の遺産分割や名義変更の前提になります。
遺言書の有無を確認する
遺言書がある場合、相続の進め方が大きく変わることがあります。
- 公正証書遺言がある場合は、公証役場で内容を確認する
- 自筆証書遺言が見つかった場合は、家庭裁判所で検認手続きを行う
遺言書があるかどうかは、早い段階で確認しておくと手続きが進めやすくなります。
相続登記を行う
相続した家を売却するには、名義を相続人に変更する「相続登記」が必要です。2024年から相続登記は義務化され、期限内の手続きが求められています。
相続登記で必要になる主な書類
- 被相続人の戸籍謄本一式(本籍地の市区町村役場で取得)
- 相続人全員の戸籍謄本・住民票(各相続人の住所地の役場で取得)
- 固定資産評価証明書(不動産所在地の市区町村役場で取得)
- 遺産分割協議書(相続人が複数いる場合)
書類の収集や記載内容に不安がある場合は、司法書士に依頼する方法もあります。費用はかかりますが、まとめて任せられるため負担を減らしやすいです。
遺産分割協議を行う
相続人が複数いる場合は、家を売却するかどうか、売却後の代金をどう分けるかを話し合う必要があります。
遺産分割協議の進め方
- 相続人全員が参加する形で話し合う
- 家を売却することに全員が同意しているか確認する
- 売却代金の分配割合を決める
- 売却までにかかる固定資産税や管理費の負担方法も整理する
合意した内容は、遺産分割協議書として書面に残し、全員が署名・実印で押印します。後々のトラブルを防ぐためにも、書面化しておくことが大切です。
家の状態と管理状況を確認する
相続した家は、しばらく空き家になっていることも多く、売却前に建物の状態を確認しておくと安心です。
確認しておきたいポイント
- 屋根・外壁の劣化や雨漏りの有無
- 水回り設備や給湯器の状態
- シロアリ被害や床下の状況
- 庭や敷地の管理状態
状態が分かりにくい場合は、住宅診断(インスペクション)を利用する方法もあります。
住宅診断は誰に依頼するか
- 建築士資格を持つインスペクター
- 住宅診断を専門に行う民間会社
- 不動産会社から紹介を受けるケースもある
依頼する際は、調査範囲や費用、国のガイドラインに沿った診断かどうかを確認しておくと判断しやすくなります。
固定資産税や管理費を整理する
売却が完了するまでの間も、家を所有している限り費用は発生します。
- 固定資産税・都市計画税
- マンションの場合は管理費・修繕積立金
- 空き家の維持管理費
売却までにどの程度の期間がかかりそうかを想定し、費用負担を把握しておくと判断材料になります。
売却方法を検討する
相続した家の状況によって、向いている売却方法は異なります。
- 仲介で一般の買主を探す
- 不動産会社による買取を利用する
- 解体して土地として売却する
相続登記が完了していなくても、事前相談として不動産会社に査定を依頼することは可能です。手続きと並行して相談しておくと、全体のスケジュールを立てやすくなります。
税金や特例についても確認しておく
相続した家を売却すると、譲渡所得税がかかることがありますが、条件を満たすと特例が使える場合があります。
- 相続空き家の3,000万円特別控除
- 取得費加算の特例
適用条件は細かいため、売却前に税理士や不動産会社に確認しておくと安心です。
まとめ
相続した家を売る前には、相続登記や遺産分割協議、建物の状態確認など、段階的に整理すべきことがあります。どこから手をつけるか迷った場合でも、ひとつずつ進めていくことで全体像が見えてきます。専門家の力も借りながら進めると、安心して売却につなげやすくなると思います。
